item 「幾何学詩集:超越」を公開

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written 2012/2/19 [ updated 2012/2/25 ]

 現代音楽系の無伴奏ヴァイオリン曲2つを書いて以来、しばらく休養していたところ、作曲(DTM)にも使っているiMacがおかしくなって、結局買い換えるという騒動が勃発。この間の事情についてこのサイトにまだ書いてなかった。今度記録しておくことにしよう。
 さて新iMacの新OS(Lion)で、ソフト音源と、ついでにCrossOverアップグレードにより、Vocaloid2 初音ミクが復活。そこで、久々にボカロ曲をつくってみた。昨年の震災チャリティ企画向け「THING」を除けば、2010年10月の「音楽のめざめ」以来である。

音楽のめざめ」は、私のボーカロイド使用曲の中では頂点に達した曲で、決してメジャーになり得ないマニアックな内容ながら、一部のリスナーには意外と好評でもあった。この曲をいかに乗りこえるか? ポスト=「音楽のめざめ」とはどのようなものか? という課題を、私はずっと考えていた。
  ビートなしのオーケストラルな部分→ベースつきビート(ラップ部分)→オーケストラルな部分
 という構成をとっていた「音楽のめざめ」とは、逆のパターンで、今回は構成した。
 さらに、今作「超越 Transcendence」(新しい曲集:「幾何学詩集」に含まれる)はサビとか、1番2番とかいう概念も破壊し、「連打されるE音」というモチーフ以外は再帰しないという、ラプソディックな構成を取った。

 この曲を聴いた人は、お経のように反復される、高い「E音」が耳について離れなくなるかもしれない。これを作曲中、私の部屋から漏れて聞こえてくる「ミの音」に、妻はちょっと悩んでいたらしい(笑)。

 序奏のあとの最初の主部は8分の7拍子だが、ベースが反復されるので、無調なのに調性的なフュージョンのように聞こえる。不協和音がジャズのテンション・ノートのように聞こえるのは、ジャズ/フュージョンにおいて「ベースの音」がルート音として機能するからなのだが、この曲の前半でもそういうことが起こっている。
 そこで「クセナキスへの回帰」を再び合い言葉に、激越な不協和音(ほとんどクラスター和音)へと進行する。
 やはり、「ビート」を持つことにより音楽は一挙に「ポピュラーミュージック化」する。反復されるリズム型は旋律の文節法も導き出してくるので、いきおい、「現代音楽らしさ」は減退する。
 私のやろうとしていることは、やはり、難しい。
 200年、300年か後には「普通」になっているかもしれない、「未来のポピュラーミュージック」を模索したい、というのが私の目標なのだが・・・。
(大衆音楽は、先端的なクラシック界の音楽よりも100年とか200年遅れて語法が変わってきている。クセナキスやシュトックハウゼンが大衆化されるのは、200年以上後だろう、というのが私の予測だ。)

「幾何学詩集」という名の下に、「断絶詩集」よりはるかに進化したボカロPOPを連作しようと計画しているのだが、「23の前奏曲」など、ふつうに現代音楽的な(クラシカルな)音楽もやりたいので、かわりばんこに作ろうかと思っている。

ちなみに、今回の曲、ボカロ曲ではあるが、動画を作る予定はない。そのうち作るかもしれないが・・・今はちょっと面倒だ。


追記。
その後、結局動画を作りました。やっつけ仕事ながら・・・。(2012/2/25)

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