item 「今」に向かう

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written 2008/11/23

作曲コンクールに応募した際に明らかになったことは、自分が「日本の現在の『芸術音楽』シーン」について何にも知らないという事実だった。
若かった頃、小説を書こうと思い(結局書かなかったが)、「同時代の日本文学」もいろいろ読んでみた。当時の「同時代」であって、その後に出て来た新しい作家については今何にも知らないが、つい何年か前に亡くなった私の1歳上の才能豊かな女性作家、鷺沢萠さんが新鮮なデビューを飾ったころだったと思う。
私は芸術的才能?を用いて社会的にコミットするなら文学だと思っていた。
その点「音楽」は私のあくまで趣味的な領域であって、プロをめざすとかそれに近い所に行きたいなどとは、かけらも思っていなかったのだ(今も思っていない)。
「趣味」(という言葉はあまり好きではないのだが)だからこそ、アマチュアだからこそ、無責任に傍若無人なのだ。私は音楽に携わりながら、果てしなく自由だと思った。外的ないかなることも気にする必要は無い。好きだと思うものだけを求め、好きなようにやればいい。こうして生成されてきたのが「私の音楽」だ。現代音楽性も、アカデミックな公準も、「私の音楽」には必ずしも必要でなかった。
この「非=社会性」に満ちた営みが、しかし、「コンクール」という社会参加に突然(単なる気まぐれで)踏み込んだのはいかにも無茶な発作的挙動であった。
この無茶を反省するために、私は作品を応募したあとになってようやく「日本の現在の『芸術音楽』シーン」を見つめることにした。

リゲティ、クセナキス、シュトックハウゼン、ブーレーズ、ベリオ、ノーノ、ペンデレツキ、シュニトケ、ケージといった比較的メジャーな、世界的評価の定まった作曲家の作品については、これまでもある程度なじんでいた。
しかし日本の作曲家というと武満徹以外はほとんどよくわかっていなかった。
相当昔CDを買って聴いてみた黛敏郎「涅槃交響曲」がどうにも好きになれず、武満や三善晃さんを押さえとくだけで「もういいや」と思ってしまったのだ。
最近はがんばって、ささやかな小遣いのゆるす限りで日本の活躍中の作曲家のCDも買っているところだ。
今のところ一柳慧さんや西村朗さん、それと間宮芳生さんあたりの作品は結構好きだ。もっと若い作曲家の作品はまだ、ほとんど知らない。東京に住んでいれば、現代音楽の演奏会なんかに出かければいろいろ触れられるのだろうが、北海道にはそれはまるでない。北海道に現代音楽なんかまず来ないのだ(最近は札幌にメシアン演奏会くらいなら来るようだが)。間宮芳生さんや広瀬量平さんとか北海道出身ではあるが、「出身」というだけだ。
日本の現代音楽シーンというのは、考えてみれば、東京という一地方でだけ演じられている、ローカルな文化に過ぎないかもしれない。CDでさえ、地方都市の店頭には並んでいない。

しかし「日本式西洋音楽」というのはどうしてこうなったのだろう。ケージだのミニマルだのの影響が直接はいってきて、それに従って「楽壇」は動いて来ているように見える。なんでも日本化してしまう折衷文化ならではという感じか。
武満徹「ノヴェンバー・ステップス」の成功以来、和楽器を西洋現代音楽のサウンドの中で鳴らす、という試みも盛んで、今やかなりの比率で存在しているようだが、西欧の人が日本人に求めているのもそういう「カラー」なのだろうなとも思うけれども、私から見て、それならいわゆる「純邦楽」を聴いたほうがおもしろいじゃん、という気もする。
日本はとっくにおのれの宗教や民族性を捨て去ってしまった国家なのだから、いまさら日本的になろう、と意図すること自体、なんとなくとってつけたような風に見えてしまう。

21世紀、もはや「前衛」の時代ではないと思っている。
欧米の「前衛」路線などとはちょっと距離を置き、自分らで好きなことをやってしまえば、日本の現代音楽ももうちょっと面白かったのではないか。ベンジャミン・ブリテンやヴォーン・ウィリアムスを生んだ20世紀イギリスみたいな感じで。
欧米とはとおく離れた日本だからこそ、そういう独自な芸風がありえたと思うのだが、なにしろ自国の宗教も民俗も捨て去った国だから、ただ流されただけなのか。
それでも、欧米の「先端的音楽」の哀れな混乱や終末感に、最後までつきあう義理もないんじゃないかと思うのだが・・・。

ともあれ、もっと「今」を見つめながら音楽するという、新しい方向性が出て来てしまったので、「私の音楽」も今後どうなるのか先が見えない。欧米式「前衛」(しかしいつまで「前衛」やってるのか?)や、それの後追いに必死な東京の方々に最後までおつきあいしたいとは思っていない。どこで手を切るか? やはり、社会(「今」)とは断絶した孤独な場所で、私はいちアマチュアらしくひとりこそこそやって、そこで満足してればそれでいいのか・・。
作曲をまるでやめようとすると、どうにも手持ち無沙汰になって過ごしづらいので、作曲自体はもうちょっと続けてみるとして。

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